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後手雁木への対抗策を考える(教えてもらう)

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前回は先手角換わりに対する後手雁木の優秀さについて解説しました。今回は先手の改良策をやねうらelmo先生に教わります。 この5手目7八銀が序盤の大きなポイントで、左美濃を含みにしています。ちなみに3手目は7七角なんですがどうもelmo先生は後手番において横歩取りを高く評価しているようで代わりに2六歩と突くと3四歩と横歩取りに戻されるのを嫌っていると思われます(世界コンピューター将棋選手権の予選リーグでポナンザを序盤からリードして以下完勝した後手番横歩取りの指し回しが記憶に新しい) 以下の進行例を挙げてみます。前回の藤井四段vs増田四段のように急戦策も有力だと思いますが仮にじっくり組み合った場合、 後手が引き角から飛車先交換をし先手が5五角のラインを防いで歩を突いた局面です。ソフトだと先手に300ぐらい振れてます。この画像を見てまず感じることは先手の玉のほうが硬い。しかも隙がない。次に3五歩からの仕掛けがあるので後手は指し手に困っている感じです。このように雁木に対してはより硬い左美濃で対抗するというのが非常に有力な策でしょう。雁木はバランスが良い囲いですが、右銀(7一銀)や右桂(8一桂)を繰り出す攻勢が取りにくい感じでそういうデメリットも感じました。 今回は以上です。次回は未定ですが再びプロ棋戦から何か題材を拾ってこようと思います。 ちなみに文字のサイズや色等を変化させるのは私的にあまり好みではなく淡々と読めるような文章のほうが昔から好みで、また単純に手間の問題もあって今のところこうしてます。

先手角換わりに再考を促した後手雁木の優秀性「竜王戦 決勝トーナメント 藤井四段vs増田四段」

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今回は早速始めます。先手が藤井四段後手が増田四段です。増田四段が角換わりを避ける4四歩からの雁木を採用しました。藤井四段の6八銀というのも4四歩をあらかじめ警戒の指し手で通常は8八銀が多いところです。この辺りは後で再度触れます。竜王戦5組の決勝、増田四段vs伊藤五段でも現れた仕掛けなので双方当然研究範囲濃厚と思われます。 藤井四段からすれば後手の7一の銀が機能する前に戦いを起こせば優位になるという意図だったのでしょうか。しかし実戦の進行を見ると、 先手自信ある局面とはとてもいえない感じです。やねうらelmo先生の解析だと400ぐらい後手に振れます。 実は先の画像ではソフトの推奨手は7九玉で後手は6二銀が普通だと思いますが仮にその交換がこの局面で入っていたとしたら明らかに先手得でした。 ・先手の6八銀7八金型では6九玉のままではまずく7九玉の一手の価値が高い ・後手の7一銀は6二銀と上がってもその瞬間はあまり+にならない(7二のスペースが嫌。6二玉と動かせなくなり玉の可動域を減らしている) といったことが読み取れます(人工知能の思考はブラックボックスと先日のNスぺでも聞きましたが…) しかし、すみません更にしかしなんですが、実戦では最初の画像から3五歩同歩4六銀に3六歩と後手応じたのですが控室で有力視されていた3四銀のほうがより有力だったと私も考えていて、7九玉6二銀の交換があった場合でのその変化図を貼ります。 この局面に対する評価値というのが非常に重要だと思うんですが私のパソコンでは後手に100ぐらい振れてる感じです。人間的な感覚からしても3筋の飛車があまりいい位置ではなくせっかく手数をかけて銀を繰り出していったわりには戦火が上がらず一方後手は7四歩4二玉と進展性があります。 私は後手4四歩の局面自体もはや先手が初期配置から損している可能性が高いという昔は全く想像してなかった考えを抱かされています。今局の序盤に限っていえば増田四段のほうが藤井四段より戦略に長けていた、ソフトの感覚をより深く吸収できていたといえるかもしれません。 それでは先手の改良手を考えてみたいと思いますが長くなったので続きは次回に致します。 しかし中終盤の藤井四段の追い上げは凄まじかったですね…

「A級順位戦行方豊島戦」横歩取り青野流最前線の攻防

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今回は表題の通り2017年6月23日に行われたA級順位戦行方vs豊島を解析します。名人挑戦経験もあるA級の常連行方さんに当初の評判からはもたついた感もありますがとにもかくにも遂にここまで辿り着かれた新A級の豊島がどう挑むか。ちなみに、今ブログでは棋譜の全掲載は避けて部分的引用に留めたいと思っております。中の人が法律をある程度齧ってることもあって棋譜に著作権があるかないかは議論の余地が大分残されており学説が今後、ある→ないに変化することが十分予想されると考えています。めんどうなトラブルは避けたいというのが正直なところです。ではそろそろ本題に入ります。 この5八玉はここ数年のソフトによる影響がもたらした横歩取りのオープニングに対する革命的変化とみなして過言ではないかなと思います。ここでは3六飛が常識的な一手でしたが最近ではむしろ少数派の選択になりつつあります。私が想像する意図としては、 ・3六飛2六飛と戻り手薄な2筋を飛車で受ける(受けないと3八金と上がることになりその形もあまり勝率が芳しくない)というのがセオリーとされてきましたが、その飛車のポジションが後手から4四角のラインに入っておりわざわざ手損をしてまで却ってマイナスの手を積み重ねてる可能性がある ・2六飛の形で桂の活用を図る3六歩と突くと飛車の横利きが止まり後手からすかさず8六歩と合わせられる危険性が非常に高い ・そもそも3六飛2六飛のポジションは7六の歩が横利きを遮っており飛車の可動域が狭く窮屈な印象を受ける。ならば3四のままのほうが自由に活用できて手数もかからないので得である といった思想かなと思っております。 この局面でのやねうらelmo先生の推奨手は5二玉で実戦の豊島さんも同じ選択でした。ただ、ここでは他にも有力手が多数存在していて、2二銀4二玉6二玉8二飛といった選択を私がソフトと遊んでる時に、大体10秒将棋なんですが、指してきたことがよくあります。ですのでアマ大会やネット対局等で相手の研究にハマってすぐ負けるのが嫌な方は5二玉は避けてもいいかもしれません。少し手進めます。この図が横歩取り青野流の指定局面という感じです。 対する豊島さんは2六歩と応じたのですがソフトの推奨手は7七角成でした。以下予想手順としては同桂5五角2二歩3三桂2一歩成4二銀2三歩同金8四飛8二歩にここで先手

28連勝を決めた藤井澤田戦は最善を尽くせば序盤早々千日手だったのか?

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将棋ファンの皆様初めまして。今ブログではプロ将棋をソフトを用いて解析することにより読者諸氏の鑑賞の一助ひいては棋力向上に資すればと思っております。読者の対象としてはアマ初段~県代表クラス辺りを主なターゲットに考えていますが、奨励会員の方やプロの先生方にもお読み頂けるような水準も後々は実現していきたいと思います。ちなみに中の人は大学将棋で全国経験がある程度で24だと五段~六段ぐらいでした。ソフト指しが嫌で止めてしまいしばらく将棋への興味を失っていた時期があったんですが、フリーの将棋ソフトが非常に強いという話を聞きいざ自分でも試してみると当然全く勝てず特に角換わり系での早い桂跳ねを軸にした駒組には衝撃を受けました。 そろそろ本題に移りますが、今回は先日行われた藤井澤田戦をやねうらelmoで調べてみたいと思います。 藤井さんは前局の瀬川藤井戦の反対側を持っての採用。48金型が昨今の流行ですが62金型を破るのも容易ではないとみて稲葉さん丸山さん等のトップ棋士も58金型を度々指しています。前局の藤井さんはここで62金でしたが澤田さんは81飛車と修正。こう備えられると25歩33銀45桂の急戦はやや無理気味。以下駒組が続きます。双方研究範囲と思われます。ちなみに先日放送されたクローズアップ現代で藤井さんは1年半ぐらい前からソフト研究を導入しているという話を聞きました。 38手目65歩に同歩と応じた局面です。ちなみにやねうらelmoさんは37手目45歩では48金を推奨していて余程58金型がお気に召さないようです(笑) この局面で澤田さんは75歩と指し以下46角95歩という進行になったのですが、恐らく後手は最善手を逃しています。次の図面で回答を貼るので腕自慢の方は考えてみて下さい。 ここでは恐らくシンプルに同銀がより有力でした。以下同銀同桂66銀に86歩同歩88歩同玉と小技を利かし、そこで強烈な一着があります。 歩頭の銀!以下ソフトの解析では67銀66銀同銀75銀と千日手になります。ちなみにこの局面同銀は55角で後手に800点以上振れます。また戻って先手が打開するなら88歩に同金ですがこれはソフトは候補手に挙げてこないのですが読ませると意外に難しいようで以下参考手順としては86飛87銀81飛86歩73角27飛38銀17飛15歩といった感じで後手に1