「A級順位戦行方豊島戦」横歩取り青野流最前線の攻防

今回は表題の通り2017年6月23日に行われたA級順位戦行方vs豊島を解析します。名人挑戦経験もあるA級の常連行方さんに当初の評判からはもたついた感もありますがとにもかくにも遂にここまで辿り着かれた新A級の豊島がどう挑むか。ちなみに、今ブログでは棋譜の全掲載は避けて部分的引用に留めたいと思っております。中の人が法律をある程度齧ってることもあって棋譜に著作権があるかないかは議論の余地が大分残されており学説が今後、ある→ないに変化することが十分予想されると考えています。めんどうなトラブルは避けたいというのが正直なところです。ではそろそろ本題に入ります。
この5八玉はここ数年のソフトによる影響がもたらした横歩取りのオープニングに対する革命的変化とみなして過言ではないかなと思います。ここでは3六飛が常識的な一手でしたが最近ではむしろ少数派の選択になりつつあります。私が想像する意図としては、
・3六飛2六飛と戻り手薄な2筋を飛車で受ける(受けないと3八金と上がることになりその形もあまり勝率が芳しくない)というのがセオリーとされてきましたが、その飛車のポジションが後手から4四角のラインに入っておりわざわざ手損をしてまで却ってマイナスの手を積み重ねてる可能性がある
・2六飛の形で桂の活用を図る3六歩と突くと飛車の横利きが止まり後手からすかさず8六歩と合わせられる危険性が非常に高い
・そもそも3六飛2六飛のポジションは7六の歩が横利きを遮っており飛車の可動域が狭く窮屈な印象を受ける。ならば3四のままのほうが自由に活用できて手数もかからないので得である
といった思想かなと思っております。
この局面でのやねうらelmo先生の推奨手は5二玉で実戦の豊島さんも同じ選択でした。ただ、ここでは他にも有力手が多数存在していて、2二銀4二玉6二玉8二飛といった選択を私がソフトと遊んでる時に、大体10秒将棋なんですが、指してきたことがよくあります。ですのでアマ大会やネット対局等で相手の研究にハマってすぐ負けるのが嫌な方は5二玉は避けてもいいかもしれません。少し手進めます。この図が横歩取り青野流の指定局面という感じです。
対する豊島さんは2六歩と応じたのですがソフトの推奨手は7七角成でした。以下予想手順としては同桂5五角2二歩3三桂2一歩成4二銀2三歩同金8四飛8二歩にここで先手に素晴らしい手があります。ソフトはこの手に気づいて評価値が先手に振れていきます。
これは前々から読みを入れるのはなかなか困難な手という感じです。玉のコビンを開ける通常はありえない選択ですが7七角成を防ぎつつ次に6七角を狙っています。以下後手からも4五桂という返し技があり先手はそれでも6七角と応じ難しいのですが若干評価値は先手寄りで豊島さんはここまで事前に研究してソフト推奨手の5五角を止めて2六歩の採用になったのかなと考えています。前回同様にお互いがソフト研究をしているというのはベースにあり、そこで如何に裏を付けるか奥の手を用意しているかという勝負に今のプロ棋界はなっていると思います。2六歩に行方さんは8四飛と応じたのですがここでは2八歩と辛抱するのが利かされのようでも傷を消している意味も強く最善だった可能性が高いようです。以下飛車を振り回すも手が作れず後手番ばかり指している勘定になり少しづつ後手に形勢が振れていく展開になり終盤も玉をうまく安全地帯に避難させ豊島快勝。豊島さんは個人的に応援している棋士の一人で今期の対羽生戦は現代将棋の最前線が見られると今からワクワクしています。次回は未定ですが同じくトップ棋士同士の対局を調べてみるつもりです。





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